中国名菜酒家 つる見(神楽座) 〜 唯一無二 佛跳牆全席、まさにクロニクル

昨年開催された、「ぶっ飛びスープ(佛跳牆)」の会は日程が合わず参加することができなかった。
今年の6月にお伺いした際に、最後になるかもしれないが、「ぶっ飛びスープ(佛跳牆)」の会を予定していることを知り、今回東京旅行を計画し参加した。

「ぶっ飛びスープ」とは、この香りを嗅ぐと、戒律が厳しいお坊さん(佛)でさえ、壁(牆)を乗り越えて飛んでくる(跳)ということから「佛跳牆」と呼ばれている。福建省がルーツという説がある。日本では漫画「美味しんぼ」で究極のスープとして紹介されて知られた。台湾の観光ガイドでは「ぶっ飛びスープ(佛跳牆)」と紹介され、レストランで予約なしで食事することは可能なようだ。日本では一部の中華料理店で、食事会の特別メニューとして手頃な値段から、高額で提供される。

鶴見シェフの料理でスープは重要なポジショにあり、漢方的な意味の他に、香り、味、食感、気品の超絶感を感じる。特にここ数年のスープは、特に存在感が高く、料理研究家の辰巳芳子さんの「命のスープ」のような”究極のスープ”だ。上野「富貴化」のときにはお話を聞くことはできなかったが、シェフの乾物の探究心は高く、吉切鮫の尾びれを初め、妥協のない目利きで選び抜かれた食材の話を伺う度に「ぶっ飛びスープ」への興味が高まっていった。

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さて、今日の食事会「唯一無二 佛跳牆全席」は、もちろん「ぶっ飛びスープ」を中心とした構成。

至来口福 
 干煸白砂
  しらすと一年物の落花生のカリカリサクサク
  炒めピリ辛「おでむかえ」

紅秋月華盤
 古法凍茶肴肉
  豚アイスバインの塩漬け
  ハムにしてから煮込んでほぐして昔ながら

 沙律皇龍蝦
  活け伊勢海老の姿蒸し
  オリジナルドレッシング

 桂花海蜇皮
  頭くらげの甘酢漬け
  早くも金木犀の香り

 花椒煮香魚
  身ごもり鮎の山椒黒酢煮
  冷製「月の下の出会い」

 蜜汁捲牡蠔
  活けカキの豚バラ捲き
  強火焼き

大菜
 蒜蠔舞茸
  山形半天然舞茸の揚げ炒め
  秋が届けてくれました

 佛跳牆
  十八種の高級乾質の壺スープ
  ”あ”二十一種になりて

 荷菜烤羊肉
  生後まもない乳飲子羊の焼き物
  二色の味で

主菜
 松菊炒飯
  松茸炒飯
  弱火で炒めて

甜点心
 三不粘
  歯につかず、皿につかず
  箸にもつかずの伝説の宮廷点心

 糀汁胖大海 時果
  桃の樹液となつめと胖大海のスウィーツ
  薬膳の心とアケビ


カウンター席につき、シェフの料理を準備している姿を見ながら、ビールを飲みながら待つ。
最初の一品は「福」の小さな器に入った「干煸白砂」。ピリ辛のシラス。それと弾けるような活力のある落花生。

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次の定番の前菜盛り合わせ5種盛り、「紅秋月華盤」。まさに季節を切り取ったものが並んでいる。伊勢海老、金木犀の香り、鮎、牡蠣。12年物の甕出し紹興酒と一緒に。前菜に対する情熱は毎回、気迫に溢れており、盛り付けるときの緊張感、焼き物の温度の完璧さに驚く。

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さて、ここから「大菜」。最初の一品は、「蒜蠔舞茸」。山形産の半天然舞茸。普段食している舞茸とは全く別もの。濃厚さは勿論香りも高い。食材の持つ力を感じる料理。

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さてここから、「ぶっ飛びスープ」が始まる。出席者全員があつまった段階で、大きな佛跳牆専用の陶器の壺がテーブルに運ばれる。みんなで壺の周りを囲む。ゆっくりと蓋を開けると、いままで体験したことのない、幾重にも重なった香りの層が周りを包む。自分の記憶にある香りを嗅ぎ分けようとするのだが、だんだん分からなくなってきた。美味しそうなものが壺から見えている。




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壺はカウンターに戻り、シェフが丁寧に食材を種類ごとに取り出していく。そして、小さな壺に移し替えて、最後の蒸しの工程に。

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壺は二種類。最初の壺は鮑などのしっかりとした食材。次は時間とともに変わる浮袋の入った壺。
壺に入れる食材は、当初の予定では18種類。これは究極の「佛跳牆」で必要な種類だそうだが、今回は更に増えて、21種類に。

・吉切鮫の尾びれ(排翅)
・吉浜産最高級干し鮑(乾鮑)
・大型鼈(すっぽん)の縁側の乾燥(郡辺)
・魚の浮き袋の乾燥(魚肚)
・貴州産天然無漂白最高級キヌガサ茸(竹蓀)
・関西なまこの乾燥 AAA(海参)
・広島牡蠣の乾燥(乾蠔)
・藍藻の乾燥(髪菜)
・山芋の乾燥(淮山)
・とうきの根(当帰)
・北海道帆立の干し貝柱(乾貝)
・鹿のアキレス腱(鹿筋)
・牛アキレス腱(牛筋)
・大分最高品質の干し椎茸(花冬茹)
・乾燥のふくろ茸(草茹)
・にれ茸(棷茸)
・黄色茸(黄茸)
・ハスの実(連子)
・8年物金華ハム(火腿)
・杜仲茶の木(杜仲)
・ポルチーニの乾燥(牛肝菌)
・鶏脚(もみじ)
・玉竹

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いずれも、二度と食べることができない食材ばかり。さらに乾貨は調理法が一般的に知れ渡っているものではないので、これだけの種類を取り扱うことができるシェフも少ないのだろう。今回は特に、選び抜かれていて、中国まで買い付けにいったものもある。

さて、スープは澄み渡っており、躰に染み渡る感覚。お酒は20年物の甕出し紹興酒に。いつもなら、紹興酒も飲みながらスープを頂くのだが、今回はスープに集中。いままで体験したことがない香りに圧倒されてしまった。
最高級フカヒレの吉切鮫の尾びれも絶品だが、その存在感が薄くなるほど、それぞの食材の訴求力は高い。姿も美しい、吉浜産最高級干し鮑。ほくほくの淮山。巨大な干し椎茸。唇が潤う魚肚、餅のような弾力。キヌガサダケに包まれた髪菜。キヌガサタケも大きく、コレだけ立派なものは初めてだ。大きな鹿のアキレス腱。これだけの食材があると同じ味になるのではと思ったが、それぞれの特徴は残り、口に運ぶ度に新たな気持ちになれる。

自分がシェフの料理に出会ったからの数々な料理を思い出しながら、シェフが若い頃の修行時代の話やいままでの料理の研究のことを聞いていると、この料理にシェフのクロニクルを読んでいるように思えた。この年月があるからこその、「佛跳牆」なんだ。

「ぶっ飛びスープ」の余韻が冷める間もなく、カウンターに塩釜焼きが。そこから子羊料理がでてきた。荷菜烤羊肉。先程の滋味深い料理から一転して、塩味がばっちり効いたパンチ力のある料理。やわらかな肉質。

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そして、シメは麺ではなく炒飯。大粒の松茸。

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最後のデザートは二種類。アケビと薬膳のスープ。スープには桃の樹液、なつめ、胖大海、種子の果肉が水分で膨らみ、ゼリー状に。おいしい。

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二品目の三不粘は片栗粉と濃厚な卵黄で作った懐かしい味の餅。カスタードクリームのようだ。西洋ではこれを小麦粉で作り、中国では片栗粉。粉の文化の広がりかたは不思議だ。

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もしかすると、来年も「ぶっ飛びスープ」の会があるかもしれない、でも無いかもしれない。それだけに貴重な体験。
でも、シェフの料理をいただく際にスープ料理は欠かせないことになった。



中国名菜酒家 つる見(神楽座)
東京都新宿区神楽坂3-6-40 かぐらビル 3F

JR 飯田橋駅 【西口より徒歩5分】
東京メトロ東西線・南北線・有楽町線 飯田橋駅 【B3出口より徒歩4分】
東京メトロ東西線 神楽坂駅【1番出口より徒歩6分】 
都営大江戸線 牛込神楽坂駅【A3出口より徒歩4分】

牛込神楽坂駅から417m

営業時間:

11:30~14:00(予約営業です水曜除く) ・ 2名様~利用可能です】
17:30~22:30(L.O.21:30)
※10月より水曜限定でサービスランチセット営業開始。

定休日:日曜日(その他、2回程不定休有り)【但し、日曜日ご予約時のみ営業します】


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by izunosuke2005 | 2017-09-23 18:00 | レストラン | Trackback | Comments(0)

ワイン、レストランそれと旅行の記録


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