物語は大きな展開もなく、15年前になくなった兄の命日に実家に戻った阿部寛と両親、妹家族達で過ごした様子が淡々と描かれる。物語としては大変つまらないものだが、和やかな雰囲気の裏にある、内面の激しい感情に驚かされる。

この映画では料理をつくり、食べる場面が多い。下ごしらえでの会話、つまみ食い、スイカ割り、出前で頼んだ近所のお寿司、うな重。家族のつながりの重要な部分は食卓だということを改めて認識した。食事は楽しいことばかりではなく、嫌な思い出、楽しい思い出が交錯する。

兄は海で溺れている少年を救助して亡くなる。その助けた少年を命日の日に、毎年呼び出す。表面は優しい顔で接しているが、嫌な思いをさせたく呼びつけていることを息子に語るシーンに心の傷の深さを感じる。

家族のつながりとは何なのだろうか。自分自身が実家とは連絡をとらず、子供の頃の嫌な思いを抱えたまま大人になり、その関係をずっと引きずっていることに再認識させられる。
是枝監督の映画出てくる子供は、他の日本映画とは違う雰囲気がでている。演技というよりは、自然なふるまいに映画を見ているということを忘れさせてくれる。親戚の子どもとの会話。笑ってはいけないところでこみ上げるおかしさ。なれない場所での孤独感。身近な人の死に対する感情。自分が子供の頃に感じたものを思い出させる。そんあ不思議な力を持った映画だ。